若き日の青春U

僕が高校を中退して3年あまりが過ぎても
僕と野田とゆかりはしょっちゅう遊んでいた
野田とは仲がよかったが、よく喧嘩にもなった
それは二人の好みがまったく相反するものだったからだ
酒・タバコ・趣味の違いがあまりにもひどかった
特に酒については、二人とも譲ることを知らなかった
恒輝が野田の好きなカシスを粗末にすると
野田も野田で、恒輝の好きなテキーラなどを小馬鹿にしていた
そして、その争いごとの仲裁に入るのがいつもゆかりの仕事だった
僕達3人はお互いに大人に近づきながら、それでも子供に帰れる時間を
どこかで探していたのかもしれない

そしてその後・・・
『ドリカム現象的な3人』はやはりと言うか僕達にも存在した
押しの強い野田にリードを許したまま、野田とゆかりは『恋人』という
称号を得て、そのことについて僕は精一杯祝福した
決して、へこむ姿だけは見せてはいけない気がした

野田とゆかりが付き合うようになってからは
3人の状態が少し不安定になっていた
正確に言うと、僕が二人から少し距離をおいたというべきだろう
野田やゆかりからは誘いがあるのだが、それを何度となく断ってきた
だから野田ともあまり飲まなくなったし、ゆかりの姿も見なくなった
野田とゆかりは恋人で、僕はその友人・・・
そういう変な気をいつからか、僕は使うようになった
僕ははっきりいってゆかりが欲しかった
けれどもゆかりの幸せを奪うような真似は出来なかった
同時に、野田になんて言えばいいかも見当つかなかった

『そろそろ暇になったか?』
野田が家に電話してくるのは久しぶりな感じがした
『あ、あぁ・・・』
僕はまた言葉を濁した
『今度こそ、3人で飲むぞ』
野田はきっぱりとそういってきた。その流れに逆らえなかった僕は
野田の誘いを受けるしかなかった
『じゃあ、明日の19時にいつものところな』
野田が時間を決めた
『遅れるなよ』
僕は遅刻の常習犯の野田に釘を刺した
『分かってるよ。また、お前がすすめるまずいラムでも飲むか・・・』
『馬鹿やろ、あれは美味だぞ。だってなぁ・・・』
『あー、もうわかったから!もういい、じゃあ明日』
恒輝がラムについて話そうとすると、野田はすぐに電話を切った
『相変わらず、上手い奴だ』
恒輝は受話器を置きながらそう思った
このときの僕はまだ、その置いた受話器の意味を分かってなかった

 

12月3日約束の日がきた
1・2・3とまぁ、いい語呂合わせにもなった
僕は待たされるのは嫌なタイプなので
いつも待ち合わせの5分前には着くようにしていた
『ちょっと早すぎたかなぁ』
僕は時計をチラッと見た。時計は18時47分を示していた
僕の足元に2,3本の吸殻があった
その吸殻を丁寧に拾ってる中年男が居た
最初はまとめて吸殻入れにでも捨てるのかと感心してみていたが
よく見ると拾った吸殻に火をつけて吸いなおしている
僕はなんだか見てはいけないものを見てしまった気がした
駅前のざわめいた景色の中で、目を背けたい現実がここにはあった
僕はそのおじさんに自分のポケットの中からタバコを取り出して
差し出した
『大事に吸ってね』
そう笑顔で言ったが、なんとも後味が悪いものだった

『ふぅ』
大きなため息をついた
ふと空を見上げて、光り輝く星達に疑問を投げかけてみた
『現実は厳しくないとダメなのか?』
星達はただ、ただ、光り輝くだけだった

いつのまにか19時を回っていたが、野田もゆかりもまだ姿を見せなかった
野田が遅れてくることはある意味当たり前で心配にもならなかったが
ゆかりまでもが着てない事に、少し引っかかった
そのまま30分以上が経っただろうか・・・
僕のポケベルが駅前の広場で鳴り響いた

49!49!03−××××−△△△△

まったく見覚えのない番号だったのだが頭に49(至急)と付いていたし
二人ともが来ない状況に不安を感じたため
一応公衆電話から電話することにした
『はい、赤倉救命センターです』
僕は掛け間違えたと思い、一度電話を切った
そしてまたかけ直してみた。しかし向こうはやはり同じことを言う
『あのぉ、石川というものですが、僕のポケットベルにそちらの番号が・・・』
僕はいい終わらないうちに向こうで、すいませんという
聞き覚えのある声がした
『恒輝?私、ゆかり』
やっぱり電話の向こうの声はゆかりだった
『何でそんなところに居るんだよ?』
僕は素朴な疑問を訴えた
『のんちゃんが、のんちゃんが・・・』
ゆかりの声はもう、すでに声じゃなくなっていた
『すぐそっちに行くから待ってろ。心配するな』
なんですぐに『心配するな』って言ったのか、自分でもよく分からなかった
ただ、いつも気丈なゆかりが涙声で電話してることをとってみれば
野田に何か大変なことが起きたことは間違いないだろうと思った
とりあえず、僕は待ち合わせの駅前からタクシーに乗って病院へと足を急いだ

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