さらば青春の光
夜間緊急入口まで来ると、目の前の椅子にゆかりがうなだれて座っていた
『大丈夫か?いったい何があった?野田は?』
僕は焦りを隠すことなく、ゆかりを質問攻めにしてしまった
ゆかりは涙だけを流しながら、しかし沈黙を背負ったままだった
『ゆかり・・・』
ゆかりを見つめていた視線がふと左にそれた
そこに野田の両親が立っていた
『恒輝君・・・』
おばさんは、今にも崩れそうな震えた声を出した
僕は高校生活の時によく野田の家に泊まりで遊びに行った事があった
そのため、野田の両親とも親交があった
僕はすぐに『光はどこに?』と、おじさんに聞いた
『こっちに来てくれるか?』
おじさんはそう僕に告げると、長い廊下を黙って歩き始めた
僕はそれについていった
そしておじさんはしばらく歩いたかと思うと急に立ち止まった
『会ってやってくれるかい?』
おじさんがぼそっと呟いた
ふと、そこを見ると霊安室と書かれてあった
僕がその重い扉を開けると、誰かがストレッチャーに乗せられていた
顔にかぶせてある布をめくると、そこに光の顔が白く、あったそこにある白くて綺麗な化粧済みの顔はまさしく野田の顔だった
愕然とする僕の後ろから、おじさんが話し始めた
『風呂場でシャワーを浴びてる時に発作を起こしてね
そのまま倒れたらしい。打ち所も悪かったらしいのだが・・・
自分達がもっと早くに気付けたら・・・』
僕は顔を向けないまま聞いた
『発作ってテンカンですか?』
『多分そうだろうと、医者は言っていたが・・・』
野田がテンカン持ちだということは知っていた
かくいう自分も同じ病気だったから・・・
おじさんが部屋を後にすると僕は野田の顔に平手打ちをした
『馬鹿だなぁ・・・生き急ぎすぎだぜ・・・』
そう呟くと同時に、たくさんの涙があふれ出た
人ってこんなに泣くものなのかというほどの、大粒の雨が僕を包んだ
何分、何十分経ったかまったく分からなかった
僕はふと我に帰り、霊安室を後にしたゆかりはまだ廊下で気を失ったかのように壁にもたれかかっていた
とにかく僕はゆかりをどうにかしなきゃいけない気がした
僕は野田の両親に挨拶をしてゆかりを抱え込むようにしてタクシーに乗せた
『ありがとうね、ホントに』
おばさんが涙声のままそういって僕達を送ってくれた
タクシーの運転手に行き先を告げると、タクシーはゆっくりと病院を後にした『おいおい、練習いいんか?』
『お好み焼きほど美味いもんはねぇな』
『焼酎ねぇ・・・俺はゲテモノ趣味じゃないからよく分からないけど・・・』
タクシーの中だというのに、野田の声がどんどんと聞こえてくる
僕はその会話の一つ一つが楽しくて仕方なかった
しかしその瞳からは幾度となく涙が流れていた
ゆかりは無言のまま外を眺めていた
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