若き日の青春

つまらない高校のつまらないテニス部は
今日も『先輩が後輩を虐める』という日課に変わりはなかった
僕はそんな部活に出るのもつまらなかったので
校舎の屋上で一人ボーっと空を見上げていた
綺麗な空だった・・・
雲ひとつない、まるで白いキャンバスに水色の絵の具で一面を塗ったかのような・・・
そんな澄んだ空だった

ガチャ

ドアが開いたかと思うと力士でも目指してるかのような
体格のいい男が、息を切らしながら僕の方にやってきた
この男が野田光だった
野田も僕と同じテニス部だが、テニスはさほど上手い訳でもなかった
でも、まじめな性格がそうさせているのかどうかはわからないが
野田は僕とは違ってまじめに部活に出ていた

『よぉ、またこてんぱんにやられたのか?』
僕は野田が何をいいに来たのか、大体の察しがついていた
『恒輝ぃ、助けてくれよぉ』
野田は汗だくの身体を近づけながら、僕に懇願した
『大体、お前が先輩に勝てるわけないだろ…はじめたばかりだってのに・・・』
『だけど、先輩が・・・』
『分かったよ、行ってやっから待ってろよ』
そう言うと、僕は重い腰をあげた
まぁ、よく毎日毎日こう同じシチュエーションで呼び出し喰らうものだな・・・
僕はそんなことを思いながら、ラケットをもってテニスコートへ向かった

コートの周りでは、これまたいつも通りに一年生がみんなくたくたになって
倒れていた
『かわいそーに』
僕はぼそっとつぶやいた
そんな僕に気付いた先輩が、大声を出してきた
『今ごろやってくるとは、部活をなめてるのか?』
僕はそんなことお構い無しに、ラケットをまわしながら言い放った
『じゃあ、先輩、僕にも稽古をつけてくださいよぉ』
もちろん、稽古をつけてもらうのは僕じゃないけどね
僕はまた、ぼそっとつぶやいた

2時間もしないうちに先輩方は全員帰っていった
今日の部活は終了らしい
さすがに2時間も動くと汗が出る

『お疲れ様』

そう声がしたほうを振り向くと、そこにゆかりがタオルをもってやってきていた
『おう』
短く返事をして、僕はタオルを受け取った
『まったく、毎日懲りないわね。先輩も・・・』
ゆかりはテニス部のマネージャを務めていた
生徒会との掛け持ちで、なかなかテニスの方に顔を出してはなかったが
たまにはこうやって覗きに来る
『他にすることねぇんだろ?』
僕はタオルで汗をぬぐいながら、そう言い放った

『野田〜お好み焼きでも食いに行くべ』
僕はやっと息を吹き返した野田とゆかりと共に学校を後にした

先輩の虐めを跳ね返すだけの技術をもっていた僕だったが
高校時代にテニスの試合に出た経験はなかった
ただ、それだけは先輩の虐めを跳ね返すことが出来なかった
もし試合に出ていたら・・・
何かが変わっていたのかもしれない・・・
それでも僕はそれを気にするようなことはしなかった

ほぼ毎日、野田とゆかりの3人で夕暮れ過ぎの学校を後にするのが
それだけで、楽しかったと言うのがホントだった

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